中学生のための語順訳と音読・入門 その2

なぜ語順訳をするか、その説明から入ります。

日本語で、たとえば次のような文があるとします。
「私は父と一緒に、昨日江戸公園へ行きました。」
この文は次のように置き換えることができます。
「私は昨日、父と一緒に江戸公園へ行きました。」
「昨日、私は父と一緒に江戸公園へ行きました。」
「昨日、私は江戸公園へ父と一緒に行きました。」
どの言い方をしても間違いではないし、意味は一緒とみなしてかまわないでしょう。日本語では助詞の「と、に、へ」などを伴って語句の意味が示されます。そして、述語が文の最後に来ます(行きました)ので、それぞれが述語につながるような使われ方であればいいわけです。
場合によっては「昨日父と一緒に江戸公園へ行きました。」というようにいわゆる主語の「私」を省いて話すこともあるでしょう。話し手がいる所には聞き手がいるわけで、その話し手が話すわけ
ですから、「私」を言わなくても普通は通じるのです。

これを英語に翻訳すると

I    went    to   Edo Park    with     my   father   yesterday.
私は 行きました 〜へ  江戸公園  〜と一緒に   私の  お父さん  昨日

となります。「〜」にはその英語の後にくる言葉が入ります。
場合によっては、with my fatherやyesterdayの位置が変わることはあっても、I went to Edo Parkという結びつきは変わりません。述語動詞の集まりwent to(Edo Park)があれば、その直前の場所には主語があります。
これを今度は逆に語順訳すると。
私は
私は〜へ行きました
私は江戸公園へ行きました
私は江戸公園へ〜と一緒に行きました
私は江戸公園へ私の・と一緒に行きました
私は江戸公園へ私の父と一緒に行きました
私は江戸公園へ私の父と一緒に昨日行きました
(英語の語順に、できるだけ合うように訳します。)

「・」は、そこにまだ言葉が入ることを示していますが、声を出しながらやる実際の語順訳授業では、とても変な感覚が残ります。でも、まだ文の途中だから、その気持ちの悪さに耐えなければいけません。英語の語順に沿って意味をつかむことの変な感覚が、そのうちなんでもなくなる時が来るのです。
日本語の文にするためには、とにかく述語は最後にもってきます。でも実際に英語が使えるようになるには、いちいちこのように日本語にしているわけにはいきませんよね。
今は日本語の文にして意味をつかむしかありませんが、英語の語順に慣れ、英文全部を日本語の文にしないでもわかるようにしていきましょう。

「私は医者です」の英語は I am a doctor.で、そのまま日本語にすると「私は です 医者」といっているわけです。その順番で言うことが約束事になっていて、話し手の心にとって自然であ
り、その順番で聞き手に意味が伝わります。
外国語を学ぶとき、日本語と異なる順序で並んでいても、それが心にとって自然な状態に感じられる必要があります。日本語とは違った順序のままに文の意味をつかんでいけるようにする語順訳の意味がここにあります。と
ころで、I am a doctor.なら日本語にしなくても直接意味としてつかめるでしょ?どのように長い文であってもそうできるようになることを目指しましょう。

一方で知識として、語順の違いやさまざまな文法を学びながら、もう一方では、英語の語順が自分にとって自然になるくらいの訓練を行うという学び方をすすめます。私たちの語順訳は、いってみれば、その訓練です。バスケットボールの練習では、何度もシュートを入れる訓練をして、入る確率を上げていきますが、それと同じなのです。
英語を自然な速さで使えるようにするには、知識も必要ですが、何よりも英文の流れ自体に慣れてしまうことです。
そのためには、音読の質を上げて、どんな例文も自分の言葉のつもりで言えるように試みましょう。

文の意味を自分でつかみ、その上で音読する。その訓練は必ずあなたの英語力を引き上げてくれます。

語順訳をすればなぜ良いのでしょうか?
英語の語順にそって意味がつかめるようになるから。
訳した英文の音読を徹底することで、言葉の意味の流れと、音の流れを重ね合わせることができるようになるから。このことができるようになれば、英文の仕組みも少しずつわかるようになります。学校で習ったけれど、わかったような、わからないようなことが、すっきりとわかるようになるでしょう。
                   (つづく)