はいく・も・ど・き その7
道わたる 杖つく人の 冬至かな乗っていたバスが、不意に止まる。前方を見ると、杖をついたお年寄りが歩道を渡っている。急いで目的地に行こうとした人も乗っているだろう、乗るべき電車の時刻に間に合うかしらと一...
道わたる 杖つく人の 冬至かな乗っていたバスが、不意に止まる。前方を見ると、杖をついたお年寄りが歩道を渡っている。急いで目的地に行こうとした人も乗っているだろう、乗るべき電車の時刻に間に合うかしらと一...
車輪よっつ陽を照りかえし夏の影 川の土手を親子二組の自転車が通り過ぎる。夏の夕陽に車輪が眩しいほどの銀色に光って。色濃いその影が颯爽として過ぎ去っていった。魔法使いのマントのように風に揺れて。
とても大きなひまわりが咲いていた。2メートルはあっただろうか。同じ背丈のものだと、こちらがひまわりを見ている、という感覚だけれど、大きいものの前に立つと、こちらが見られている。なんだか教師の前で叱られ...
歳をとると、もの忘れがひどくなるのは当たり前。がしかし、そうだ、とあることを思い立って立ち上がったのは良いが、その瞬間に、それが何だったかを思い出せないと不安に。そして次第に、それがとても大事なことの...
7月。田の緑が日に日に濃くなり、目に優しい風景が広がる。遠くまでつづく田の中へと、郵便の赤い車が入っていく。昨日までの言葉が、車輪の音の違いに気づき、眠りから覚めているにちがいない。緑と赤の対比が面白...
最近は、典型的な夕立にあまり出会わないような気がする。雨雲の多くは線状降水帯になりやすく、災害にまで結びつくことが多い。熱中症が騒がれる以前は、この夕立がひとときの涼を運んできて、ホッとしたものである...