中学生の皆さんへ 1/2

テストの点数はある程度とれるけれど、ほんとうのところ、「わかった」という気がしない。
このような思いをいだいていませんか?
英語も数学や理科と同じように学科扱いされていますが、いうまでもなく、世界中で実際に使われているひとつの言葉です。
言葉なので、それを使うことで、私たちは人とコミュニケーションをとったり、自分のことを言い表したりします。
日本語なら、特に意識しなくても言葉を手にしてきたように思えますが、もしあなたが生まれて以降、誰とも話さず一人で生きてきたとすれば、また本も読まず、テレビも見ないで過ごしてきたとすれば、どうでしょう?日本語が使えるようになったと思いますか?

言葉は人とのつながりの中で、あるいは本やそれに類するものを読むことで育つものです。
自然に身についたように見えますが、ほんとうは違います。
あなたが自分自身や周りの人や自分の環境に対して、どこかでいつも意識したり関心を持ったりしてきたから、身についたと考えられます。
何かにいつも関心を持つからこそ、言葉は育っていくと考えられます。
英語が「わかった」と思えるためには、ホンモノの英語に関心を持ちつづけるしかありません。
否応無しに関わりが生まれるのが、物語なのです。
英語を「わかった」気になれるためには、ホンモノの物語にぶつかる以外ないのです。

He is my father.という文があるとします。「彼は私の父です」という意味ですよね。
人称代名詞やbe動詞の説明の時に出てきた例文と考えてみます。
主語が3人称で単数形で時制が現在だから、be動詞はisで、次は1人称の人称代名詞の所有格・・というようにそれぞれの単語の説明があり、日本語を当てはめて訳ができていくわけです。
ここでちょっと、日本語に目を向けてみましょう。
日本語を読んで、あなたは何かを思い浮かべましたか?
文字をみていると、ただそういう意味の文にすぎません。しかし野球の試合に出ているあなたに向かって、客席から手を振っている人がいて仲間が一斉にそちらを見たとします。今日は応援に行けないかもしれない、そう言っていたのに、お父さんが来てくれたとします。
そこである気持ちを抱いてあなたは仲間に「俺の親父だ」と言ったとします(英語では「誰が」という言葉が入ります)。

あるいは、先生との三者面談の時、教室に入ってあなたが「父です」と紹介する場合も想定できるでしょう(英語では「誰が」「誰の」という言葉が入ります)。
二つの場面だけでも、気持ちのありようが違うことがわかります(そして、日本語では主語を言わなかったり、人称代名詞の所有格を使わなかったりすることはよくあることです)。
すると、声に出した時の言葉の調子、音声の特徴も変わることが容易に想像がつきます。嬉しくてはしゃいだ気持ちの時と、かしこまった場面での言葉は音声にも大きく影響を与えます。
何よりも、その時は「自分の」言葉として発話していますから、気持ちが言葉の音声を変えてしまうのがわかります。

したがって、英語のHe is my father.も場面によって音声の特徴が変わりうる、ということがわかるでしょう。しかも何かを表現するとき、普通は滑らかでスラスラと言っているはずですから、単語ごとに切れたり、抑揚がなかったりということはあり得ません。下手でもいいというわけにはいきません。
必ずひとまとまりの文として、内容にあった声になるでしょう。
言葉の意味だけではなく、声も内容を表すのです。したがって、内容を表す滑らかな音読は、英語学習では、大切なことだということがわかります。
「わかった」という思いは、自然な英語表現をきちんとまねした時に生まれるといえるでしょう。

もう一つ伝えたいことがあります。
このHe is my father.という文が生まれてくる場面を考えれば、世界にHe(彼)だけがポツンといるのではなくて、周りに人がいて、その中からHe(彼)を選び取っている。
何かを主語にするということは、いろいろとモノや人がある中で、ひとつのものを選択しているということを表しています。日本語ではあまり意識されませんが、英語では原則、主語が不可欠です。ある状態にあるもの、ある動作をするもの、つまり述語動詞とその前に位置する主語はセットなのです。
日本語のふだんの会話では、そこがあいまいです。
言う時もあれば、言わない時もある。
英語では、とにかく主語を立てるということが不可欠です。

ところで、どのような文であっても、まずはスラスラ言えることが大事です。
スラスラ言えるようになり、その文の意味もいちいち日本語にしなくてもわかるようになれば、今度はそれを自分が話す言葉だと思って声に出しましょう。
「自分の」言葉だと思うということは、場面が想像できているということです。
物語だといつも場面がありますから、そこで使われる言葉の音声は変化に富み、豊かです。そこまで音読の質を上げることができれば、必ず英語力はつきます。

想像することは苦手、と言わないで努力してみてください。
「誰か他の人の」文と考えないようにしましょう。

どんな文も、自分がその文の話し手になったつもりで発話することは、とても大切なことですし、話し手になるということは、何かを主語として取り上げ、そこに述語動詞をセットする意識を持つことにほかなりません。
話し手になったつもりで発話できれば、「わかった」まではもう一歩です。

                                 (つづく)