(小学4年生の場合)
(授業でやる予定の文章(半ページ数行程度)は、前もってCDを自分で聞き、声に出し練習を済ませておくのが宿題)
The man slowly opened the door.
(今から訳をする文の音読をする)
先生:はい、まず最初の単語を声に出して読んでみて
(最初の単語を読んで、その意味を言わせます)
生徒:ザ
先生:Theは冠詞。10番を読んで(と「訳ルール」を確認させる)
生徒:「the 特定の名詞があとにくる。『その』、訳さないことがある」
先生:ここは訳しておきましょう
生徒:The「その」
先生:はい、次
生徒:man男
「その男は」
先生:「は」がついているけれど、なんで?
(ここではまだ動詞が出ていないので、主語だと確定していません。そこで「動詞が出てきてからつけることにしよう」などと指示します。「今はそこまでの単語の意味をつなげるだけね」などと伝える)
生徒:「その男」
slowly「ゆっくりと」
先生:そこまでをつなげてみて
生徒:「その男ゆっくりと」
先生:はい、ではその次の言葉(単語)
生徒:opened「開いた」 「その男ゆっくりと開いた」
先生:(動詞が出てきたので)動詞はどれ?
生徒:opened
先生:じゃあ、ルールを当てはめて。
生徒:・・言いよどむ
先生:動詞の前は何?
生徒:主語
先生:主語には何がつくの?1番のルールだね
読んでみて
生徒:「主語には『は』『が』(『も』)をつける」
先生:はい、ではもう一回言ってみて
生徒:「その男はゆっくりと開いた」
先生:はい、続けて。このtheは訳さずに、次の単語につづけて
生徒:the door「ドア」 「その男はゆっくりと開いたドア」
先生:②番のルール(動詞の訳は日本語では最後にくる)を読んでみて
生徒:(読む)
先生:どうぞ(とうながす)
(ここでももしまちがえたら)
先生:動詞はどれ?
生徒:「開いた」 「その男はゆっくりとドア開いた」
先生:訳ルールの3番読んでみて。(目的語には「を」「に」をつける)
訳ルールの右の図を見て。動詞の右の部屋は何?
生徒:目的語
先生:何がつくの? 英文を見てごらん! 目的語の部屋にはいっている言葉は何かな?
生徒:「door」
先生:はい、やって
生徒:「その男はゆっくりとドアを開いた」
先生:はい、その通り、できたね。
ではもう一度英文を読んでみて。こんなふうに一文の訳を追えます。
生徒は訳していると、英語から離れ、日本語を自分が納得できるように勝手に動かしてしまいます。つまり、英文の訳ルールから離れることがしばしば起こります。初期の段階で大事なことは、とにかくルールを定着させることに尽きます。語順訳では途中まで気持ちの落ち着かない文の断片です。その断片を早く気持ち良い日本語にしたいという誘惑にいつもかられています。この日本語への引き寄せをせき止め、必ずルールを守ることが大事だとわからせることが先生の役割と言えるでしょう。
文の要素:主語、動詞、目的語といった概念は説明したからわかるというものではありません。訳の中で繰り返し指摘し、声に出していくことで、少しずつ形成されると見た方が良いのです。語順訳は訳をすることと並行して、こうした概念をゆっくりと育てていくという視線のもとに、アドバイスやヒントを与え、生徒に答えさせるということの繰り返しです。この「やりとり」の継続こそが生徒の思考力を育て、概念形成を助けるのです。