2022 年 2 月 のアーカイブ

新高1からの新教科書採用2

2022 年 2 月 22 日 火曜日

文科省は、指導要領に基づいて学校の授業が行われることを望んでいるわけですが、現実の高校は千差万別であり、英語コミュニケーションといった基礎的な分野で躓いていることなどは想定されていません。しかし方針として、CEFRに基づいた英語力を目指し、実践的な英語力の獲得と、自分の主張、判断等が論理的にできることが期待されていることは明らかであると思います。

私たちができることには限りがあります。これらの分野全てをカバーすることなど到底できません。しかし、基礎力をつけ、英語感覚を身につけさせることができれば、その力は必然的に論理力の強化にはつながると考えられます。なぜなら、日本語と違って、主語を常に必要とし、その後に述語動詞を配置する英語は否応無しに論理的な構造を生み出していると思われるからです。また共有感があるところでは主語も言わない私たちの言葉と違って、常に主語を立て、また人称代名詞を多用する英語表現は、他者との関係を強く意識していると言えます。こうした人間関係の捉え方の日英の違いは厳然とあります。従って、物語が中心の語順訳を通して、英文を理解する活動は、言葉と場面と人間関係を一つのものとして意識せざるをえませんので、大いに役立つものと思われます。そこで培われた英語力は論理力にもつながるでしょう。

たとえ中学生、高校生でも、本来は短いものよりは、長いもの、説明文よりは物語のほうが絶対にその効果は高いと思われます。入試などでは、資料、グラフ、地図といった材料をもとに、その内容や状況を把握できるかが求められる場合が多いですが、論理や判断力という前に、トラになって

“I AM THE TIGER.”とあたかもトラのように言うことができることが大切だと思います。このIは、日本語で私たちが「わたし、俺、わし、わたくし」と色々に使っている主語とは異なり、誰でも(大統領であれ、労働者であれ)が自分のことを指すのに使います。つまり英語でIと言う時と、日本語で相手に合わせて「わたし」と言うときでは、微妙なずれがあると考えられます。「わたし」=Iとは必ずしも言えません。Iとして自己表現する力は、英語の持つ論理的性格に近づけることになるように思われます。子供に対して、自分のことを「私」と言わずに「お母さんは」と言う日本語の世界は、西洋から見ればとてもユニークなのではないでしょうか。

 

「論理・表現」の活動では、微細な文法にこだわることなく、その実用の中で理解させなさいというのは正論だとは思います。しかし、それができるためには基礎力を身につけ、モノマネ段階で終わらせないだけの十分な時間が必要でしょう。いい加減な発音やテンポ、イントネーションで終始して終わりではなく、自分の言葉のようにランぺルやヘンゼルになって表現するほうがずっといいに違いありません。学校では英語を使っての授業を推進するように言われていますが、曖昧に笑い、分かったふりしてすませることがないことを、願うばかりです。

 

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新高1からの新教科書採用1

2022 年 2 月 15 日 火曜日

新高校1年生から、指導要領に基づいた新しい教科書の採用となります。

外国語科の目標は

知識および技能:外国語の音声や語彙、表現、文法、言語の働きなどの理解を深めるとともに、これらの知識を、聞くこと、読むこと、話すこと、書くことによる実際のコミュニケーションにおいて、目的や場面、状況に応じて適切に活用できる技能を身に付けるようにする。

思考力・判断力・表現力等:コミュニケーションを行う目的や場面、状況などに応じて、日常的な話題や社会的な話題について、外国語で簡単な情報や考えなどの概要や要点、詳細を話し手や書き手の糸などを的確に理解したり、これらを活用して適切に表現したり伝え合ったりすることができる力を養う。

学びに向かう力、人間性等:外国語の背景にある文化に対する理解を深め、聞き手、読み手、話して、書き手に配慮しながら、主体的・自律的に外国語を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度を養う。

といったことが掲げられています。

従来の4技能のうち話すことは、話すこと(やりとり)と話すこと(発表)の領域にわかれ、全体で5領域という観点での言語活動が示されています。大きく変わったのは、語彙数が今までより英語コミュニケーションIでは400〜600程度、同IIでは700〜950程度、同Ⅲでは700〜950語程度の新語が加わります。

また現行の「英語基礎」、「英語表現I・II」、「英語会話」が、「論理・表現I・II・Ⅲ」となり、スピーチ、プレゼンテーション、ディベート、ディスカッションなどの言語活動を通して、話すことと書くことを中心とした発信力を強化することになっています。

そして、文法事項の指導については、用語や用法の区別などの指導が中心とならないよう、文法などの言語材料を言語活動と関連づけて、実際のコミュニケーションにおいて効果的に活用できる技能を身につけることが重視されています。つまり、上記の言語活動は文字通り、論理的であることや、自分自身の表現となっているように行うべきで、そこで文法を抑えるといったことはしないようにということのようです。もちろん、これらは学校における授業への指針です。

標準単位数は 英語コミュニケーションI=3、同II=4、同Ⅲ=4。論理・表現I=2、同II=2、同Ⅲ=2となっています。

こうした方針のもと、小学校から中学校、そして高等学校へと接続させることで、グローバル時代を前提に、実践的な英語力の獲得と、そして論理的でかつ自己表現を主体的に行えることが目指されていると言えるでしょうか。つまり、小学校での成果が中学校につながり、中学校での成果が高校へつながるようにしたいということのようですが、実態はどうなのでしょう?

(新高1からの新教科書採用2に続く)

 

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